神社の境内で目を光らせている狛犬が、北海道には九百対以上あることが、恵庭市の木
彫作家丸浦正弘さん(64)の調査で分かった。丸浦さんは八年間かけて二千三百カ所の神
社を訪問し由来を探った。北前船で出雲から運ばれたものや、道都・札幌の建設期に奉納
された札幌軟石の地元産」など、調査結果から開拓史の一端がのぞく。
もともと路上ウオッチングが趣味の丸浦さんは、「左右非対称で顔つきも千差万別。造
形的な面白さがある」という狛犬の魅力にとりつかれた。
道内全域の神社を訪ね、台座に書かれた奉納の時期や、制作した石工材質などを確認し
た。神主、石材店にインタビューした。
日本海側は北前船とともに
その結果、興味深い事実も分かった。北海道に狛犬がやってきたのは江戸末期。大阪、
出雲などで制作されたものが北前船で運ばれ、函館から留萌管内天塩町までの日本海沿い
の町にある神社に奉納された。
「道産」の狛犬は明治三十年代から。札幌を中心に、札幌軟石を使った独自の狛犬が置
かれていった。札幌近辺では九割五分が札幌軟石という。丸浦さんは「江戸末期には海岸
沿いに和人の拠点がつくられ、明治時代に全国から石工が集まった。狛犬の歴史は、その
まま開拓の歴史でもある」と語る。
丸浦さんは研究成果を広く知ってもらおうと、A4判の紙で二百二十枚もの調査記録を執
筆。現在は研究成果を本にするため、札幌の出版社と交渉している。
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