人事・経営方針の違い、負担金で対立 
一部神社が本庁に反旗 
 全国に約8万ある神社を傘下に置く神社本庁(東京都渋谷区)から離脱しようとする動

きが一部の神社に出ている。人事・経営方針の食い違いや負担金を重荷に感じるケースが

多いといい、訴訟に発展した例もある。
 
 八幡宮の総本宮、宇佐神社(大分県宇佐市)。自主的に選んだ宮司候補の女性に対し、

神社本庁は「経験不足」として承認せず、女性らが離脱を考えると、本庁は新宮司を派遣

し経営指揮に当たらせた。

 女性は今年3月、地位確認を求めて新宮司らを提訴したが、今月10日、大分地裁中津

支部は「宮司就任には本庁の任命行為が必要」として、女性側敗訴の判決を言い渡した。

女性の弁護人は「本庁派遣の宮司による『神社乗っ取り』が全国でおきている」と怒りを

あらわにし、即日控訴した。

          宮司派遣めぐり訴訟も

 同様に離脱を望む高松市の冠櫻神社も、書類不備を理由に離脱申請を受け付けない香川

県を提訴。一、二審で敗訴し、最高裁に上告中だ。参拝客が減り、年額約13万円の負担

金も重いという。「神社を守るべき本庁が県と一緒になって神社を圧迫している。敗訴が

確定すれば新宮司に明け渡さなければならない」と嘆く。

 縁結びの神社として知られる石川県羽咋市の気多大社は、2005年11月に離脱のた

めの規則変更を申請し、県知事も承認した。本庁は取り消しを求めるとともに、宮司を懲

戒免職処分にして新宮司を派遣したが、今年4月に最高裁で規則変更が認められ、同大社

は離脱に成功した。

 気多大社は遠距離で参拝が難しい人のために、インターネットでお守りの注文を受け付

ているが、本庁は「お守り授与は神社に行くのが原則。ネット注文はなじまない」との理

由で、宮司を懲戒免職にしたという。同大社関係考は「本庁は言うことを聞く宮司を『天

下り』させて、中央集権化しようとしていと懸念する。一方、明治神宮(渋怒区)は04

年、宮司人事をめぐっで対立した後離脱したが今年8月、創立90を機に関係を修復した

。関係者は「神社界の分裂は良くない。日本人の精神の要だから一枚岩でなければ」と話

すが、負担金の支払いについては「調整中」とした。

 こうし動きについて、神社本庁は「(宗教法人法では)離脱する神社を引き留めること

はできないので、各神社の判断に任せている。宮司派遣は、それぞれの事情があるので一

概には言えない」としている。

 神社本庁

 連合国軍総司令部(GHQ)の神道解体に対抗するため、全国の神社が1946年に設
立した自主組織。宗教法人として、全国約8万の神社と包括関係を結び、各神社に対し宮
司人事、土地・宝物の財産処分で最終権限を持つ。各神社からは規模に応じた負担金の上
納を受けている。神社は都道府県知事に申請し、本庁から離脱することができる。

 2010年12月19日「北海道新聞」朝刊より

切り抜き帳に戻る


inserted by FC2 system