身近なパワースポット
 神社にハマる若者 女性
  「特別な力をもらえる」 「癒やされる」と話題の「パワースポット」ブームで、道内

で神社を訪れる若者や女性が増えている。先行きの見えない世相を反映したブームだが、

人気にあやかり、観光名所として売り出す町も出始めた。半面、本来の信仰とは異なる注

目のされ方に、神社側からは戸惑いの声も上がる。
 
 「宗教にはまっているわけじゃないけど、心が清らかになる感じがする」。札幌市中央

区の女性会社員(23)は毎月、同区の北海道神宮を参拝する。3年前、付き合っていた男

性と別れ、傷心していた時に訪れたことがきっかけだった。今では雑誌でパワースポット

と紹介された島根県の出雲大社や三重県の伊勢神宮など全国の神社巡りもしている。

 北海道神宮では取材依頼が多くなり、参拝者数も増えている。例年70万人台だった三

が日の参拝者数は昨年が約82万人、今年が約86万人だ。

 「こま犬に縁結びの力がある」と口コミで広がる北海道神宮頓宮(同市中央区南2東3

)も、こま犬をなでたり、写真を撮ったりする女性が後を絶たない。

 このような現象は全国的な傾向で、伊勢神宮は昨年の参拝者数が860万人を超え、過

去最多に。東京の明治神宮も井戸が「開運スポット」と話題となり、整理券が配られるほ

どの人気だ。

      美瑛、札幌で参拝者増/せたな町大々的PR

       手軽なブーム 戸惑いも


 背景には、ここ数年のパワースポットブームがある。霊能者や芸能人が訪れる神社や寺

、景勝地が「良縁に恵まれる」などと紹介され、人気に火が付いた。

 上川管内美瑛町の美瑛神社は参拝者の大半が町民だったが、本やインターネットで「著

名人も訪れるパワースポット」と紹介され、町外からの来訪が急増。統計は取っていない

が、「昨年は参拝者数が例年の2、3倍に増えた」という。

 ブームに便乗し、槍山管内せたな町は、昨夏から断崖絶壁にある山岳霊場の太田神社な

ど町内3カ所を「せたな3大パワースポット」と名付けて大々的にPR。テレビ番組でも

紹介され、町産業振興課の尾野真也主任(35)は「パワーを感じる場所。地元のおいし

いものも食べていって」とアピールする。

 一方で困惑も広がる。北海道神宮では来訪者から「どこの鳥居をくぐると、金運が上が

るんですか」と面食らう質問も。パワーがあるとされる木にだけ触って帰る人もいる。

神職の遠田信之さん(38)は「注目されるのはうれしいが、お祈りして力をいただくの

が本来の信仰。お参りもしてほしい」。美瑛神社も「本殿を素通りされたりすると、戸惑

います」。

 天使大の田島忠篤教授(宗教学)は「いつの世も人は精神的なものを求めるものだが、

最近のブームは手軽さが特徴。神社は自由に出入りができ、深いかかわりが苦手な若者の

感覚とも合致したのだろう」と話している。

 2011年02月12日「北海道新聞」夕刊より 

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